2022年より新たに女性医療センターを開設いたしました。
各部門を設立し、従来の婦人科医療をより高めていくとともに、婦人科のみに特化せず皮膚科や整形外科、乳腺外科、リハビリテーション科など各診療科とも連携をとりながら、あらゆる年代の女性のお悩みに対応できるよう充実した診療を目指します。
特長
当科では開院当初より子宮内膜症や子宮・卵巣良性疾患、骨盤底疾患に対する創の小さな手術(腹腔鏡下手術・子宮鏡下手術)に特に力を入れており、常勤医6名のうち、腹腔鏡技術認定医が6名、子宮鏡技術認定医が5名、ロボット手術技術認定医が1名在籍しております。高度な専門技術を駆使して創の小さな手術(低侵襲手術)を行うことで、術後の痛みの軽減や入院期間の短縮など患者様の身体と心の負担を最小限にし、早期の社会復帰を目指してまいります(詳細は鏡視下手術部門 をご覧ください)。
女性担当医による女性専用ブースでの診療
女性の月経にまつわる症状は様々で、他の人と比べることが難しいため異常に気づくのが遅くなったり、また診察の不安などから受診の足が遠のく方も少なからずいらっしゃると思います。出血が1ヶ月に数回あったり、逆に月経が数ヶ月来ない、月経量がいつも多くてふらつく、月経痛が強くて日常生活に支障がでるなどの症状は、子宮や卵巣に重大な病気がある可能性もございます。
当院では平日は終日、土曜は午前に女性担当医が女性専用ブースで診療を行っており、初めて婦人科を受診される方でも安心して診察を受けていただけるような環境作りを心がけておりますので、気になる症状のある方はできる限り放置せず、まずはご相談ください。また、受診の際には最近の月経の日付や症状のあった日をメモして来院いただけますと診療の参考になります。
診療方針
各部門間で連携を取りながら、月経異常や不妊治療、更年期障害などあらゆる年代の女性の疾患に対し、患者様一人ひとりのニーズにあったオーダーメイド治療を心がけております。
なお、当院では体外受精や妊婦検診、悪性腫瘍に対する治療は行っておりませんので、必要に応じて速やかに専門医療機関へご紹介させていただきます。また当院には分娩設備がないため、妊娠初期の診察は行っておりますが、胎児の心拍確認後は分娩施設へご紹介させていただきます。
対象となる疾患
子宮内膜症
本来子宮の内側にできる子宮内膜組織やそれに類似した組織が何らかの原因でそれ以外の場所に発生し、発育する疾患で、20-30代の女性に多く見られます。子宮内膜症は女性ホルモンの影響を受けるため、月経周期に合わせて増殖し、周りの臓器(腸や膀胱など)と癒着を起こすことで月経痛や排便痛など様々な痛みが生じ、不妊症の原因になることもあります。
子宮筋腫
子宮筋腫は、平滑筋とよばれる筋肉組織からできるこぶが子宮の壁に発生、発育する病気です。小さなものも含めると30歳以上の女性の20~30%に発症すると言われており、筋腫の位置や大きさによって月経量の増加やそれに伴う貧血、圧迫による頻尿や便秘などの症状が見られます。
子宮内膜ポリープ
子宮の内側(内膜)表面から突出したイボのような腫瘍で、エストロゲン(女性ホルモン)の影響で発生します。無症状なことも多いですが、不正出血や月経量の増加、不妊症の原因になることがあります。
卵巣嚢腫
左右にある卵巣に袋状の腫瘍ができるものを卵巣嚢腫といい、比較的若い女性に多く、そのほとんどが良性です。症状が出にくいため健診などで偶然発見される事も少なくありません。嚢腫の大きさや性状により定期検診が可能な場合もありますが、大きい嚢腫の場合は捻れたり、破裂する危険があるため原則手術をすすめます。
骨盤臓器脱
女性の骨盤の底には子宮・膀胱・直腸などの臓器を支えている筋肉や靱帯(骨盤底筋群)があり、腹圧により臓器が骨盤外にでないように支えています。出産や加齢に伴いこの支えが緩み、子宮や膀胱、直腸が骨盤の中から腟に下がってくる病気を骨盤臓器脱といいます。脱出する臓器により子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤、小腸瘤、腟脱などに分けられ、これらが同時に出現することもあります。
不妊治療
一定期間妊娠に取り組んでも妊娠しないものを言います。特に年齢が高い場合には、早めに検査や治療を始めた方が良いと思われます。血液検査、感染症検査、エコー検査、子宮卵管造影検査、性交後検査等を月経周期に合わせて行っていきますが、女性の検査だけでなく、男性の精液検査も重要です。必要に応じて排卵誘発剤を使用し、タイミング法もしくは人工授精を行います。数周期ごとにタイミング法→人工授精→体外受精へステップアップしていく事が多いですが、当院では体外受精は行っておりませんので、その場合には不妊施設へご紹介致します。
月経異常
月経異常とは、月経の周期や持続日数、月経に伴う出血の量などが正常な月経とは異なる状態をいいます。本来月経周期は25~38日が正常範囲で、それより短い間隔を頻発月経、それより長い間隔を希発月経といいます。血の量が多いことを過多月経、少ないことを過少月経といいます。触診、内診、超音波検査、血液検査などを行い、原因を検索します。経過観察や薬物療法、手術療法など、最善の治療方法を検討いたします。
月経困難症
月経の直前、もしくは月経開始時に下腹部痛、腰痛、頭痛、吐き気などの症状が伴い、それらが日常生活に影響が出るほどの場合を月経困難症といいます。25歳未満では40%以上に認められます。大きく2つのタイプに分けられ、子宮や卵巣に異常が確認できない機能性月経困難症と子宮や卵巣に異常があることで症状が現れる器質性月経困難症があります。触診や内診、画像診断(超音波検査、MRI検査)などの検査を行い、子宮や卵巣に異常(子宮内膜症、子宮筋腫 など)があるか確認します。治療方法も鎮痛剤、経口避妊薬の併用、漢方薬手術療法など、多岐にわたります。様々なケースが存在するため、痛みの程度、疾患の程度に関わらず、お気軽にご相談下さい。
40〜50代を中心とした体の不調
女性ホルモンが徐々に低下し閉経となる前後5年(計10年)を更年期といい、全ての女性に訪れます。発汗、ほてり、倦怠感、不眠、気分の落ち込み、関節痛などの更年期障害症状は自然にやり過ごせる事ができれば受診の必要はありませんが、生活に支障があるほど辛い方もいらっしゃいます。治療ご希望の方、更年期障害症状なのか聞いてみたい方はご相談ください。
更年期障害症状は女性ホルモンの低下によるもの、加齢による身体的変化、性格による心理的要因、生活環境による社会的要因などが複数の因子が関係していることが多いので問診を行い、同じ症状を呈する他の病気がない事を確認し採血により女性ホルモン値を計り診断します。その上でご希望があれば漢方、ホルモン治療、プラセンタ注射などのご自身に合った治療法を提案します。
子宮がん検診・婦人科腫瘍
子宮頸がんは、主に性交渉によって子宮頸部にヒトパピローマウイルス(HPV)が感染することで発生する悪性腫瘍で、近年は20~30代の若い女性で増加傾向にあります。子宮頸がんはHPVワクチン接種による予防と定期的な検診による早期発見がとても大切です。当院では9価型ワクチンを採用しており、これにより日本人の子宮頸がんの原因となるHPVウィルスのうち88.9%が予防できるとされています。また早期の子宮頸がんや子宮頸がんの前段階である子宮頸部異形成では性器出血など自覚症状がでないことも多いため、少なくとも2年に一度は子宮頸部細胞診を受けることをお勧めします。当院では板橋区在住の方は区の無料検診も行うことが可能です。また子宮頸がん検診(細胞診)で異常が指摘された場合は、精密検査(コルポスコープ診、生検組織検査)や手術加療(子宮円錐切除術)も行っております。
子宮体がん検査につきましても、細胞診および組織検査による診断を行っております。不正出血や月経の不調などがある場合はご相談ください。なお、子宮頸がん、子宮体がんと診断された場合は速やかに高次医療機関へご紹介させていただきます。
性感染症
性行為によって起こる感染症です。具体的には淋菌、クラミジア、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、トリコモナス、細菌性腟症、カンジダ、毛じらみ、梅毒、HIV、B型肝炎、C型肝炎等があります。視診、腟鏡診、子宮頸管粘液検査、腟分泌物培養検査、血液検査等で診断し、疾患ごとに抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬の経口錠・腟錠・軟膏・注射剤を使い分けます。