血液は体の中を循環し続け、生命の維持に極めて重要な役割をはたしています。血液の病気は、赤血球、白血球、血小板、凝固因子の異常によって起こります。
その結果、体内の物資の運搬や感染防御、止血などに重大な問題が生じます。血液疾患は診断が大切になります。その後の治療に大きく影響するからです。
しかし、診断・治療は専門性が高く、その時お役に立てるのが血液内科専門医です。
鉄欠乏性貧血、巨赤芽球性貧血、再生不良性貧血、溶血性貧血、自己免疫性溶血性貧血、伝染性単核症、急性白血病、骨髄、系腫瘍、リンパ系腫瘍、免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病などが当科で拝見する疾患です。
血液の中の赤血球が足りなくなった状態、末梢血中のヘモグロビン濃度が基準値以下に低下した状態です。さまざまな原因で起こり得ますが、どの貧血でもみられる典型的な症状は顔色が悪い、息切れ、脈が速い、動悸、疲れやすい、頭痛、めまい、失神などがあります。症状は個人差が大きく、貧血が短い時間に起こった場合には症状がはっきりでますが、時間をかけてヘモグロビンが低下した場合には症状がないこともあります。頭がぼーっとする、立ちくらみがするという意味で「貧血を起こす」ということがありますが、ここでの医学的な意味とは異なります。
ヘモグロビン濃度が女性なら12g/dL未満、男性なら13g/dL未満を貧血といいますが、高齢になると、Hbが低下し、男女差が小さくなります。貧血の中で頻度の多い疾患は鉄欠乏性貧血で、採血検査で診断できます。重要なことは鉄欠乏性貧血にいたった原因の検索です。鉄が欠乏する出血の可能性を考え、具体的には女性では過多月経や性器出血、男性と閉経後の女性では消化管潰瘍や癌などによる消化管出血の有無を検査します。その場合、婦人科、消化器科とともに診療を行なっていきます。鉄欠乏性貧血の治療は原因となる病気の治療ですが、鉄剤や輸血を考慮することもあります。
◀ この表は左右にスライドできます ▶
健診などで白血球の数が多い、もしくは少ないことを指摘されたことがある、他院で行われた検査で異常を指摘され、来院されることがあります。その場合、症状がないことが多いです。白血球の数が異常になる原因は血液疾患だけでなく、感染症、薬剤、膠原病など多岐にわたります。具体的には細菌感染、ウイルス感染、抗甲状腺薬や抗癌剤、慢性骨髄性白血病などで重篤な疾患も含まれるため、適切な検査を行い、迅速に治療できるように診療にあたっています。
造血器腫瘍とは血液細胞に遺伝子異常が生じ、腫瘍として増殖をきたし、白血病や悪性リンパ腫などの病態を引き起こす血液の病気です。血液には成長途中の血液細胞を含め多くの細胞があり、血球のどの段階で腫瘍化するのか、また、腫瘍化した細胞に分化能があるのかによって分類されます。
細胞の形態や遺伝子異常で分類され、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症、急性リンパ性白血病、悪性リンパ腫、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫などが含まれます。造血器腫瘍についてWHO分類ではさらに詳細な分類がされており、専門医による診断・治療が必要な疾患です。
中高年の方に多く、慢性の経過をたどるため、無症状のこともあり、血液検査などで偶然発見されることがあります。後天的に生じる異常な造血幹細胞によるクローン増殖により、赤血球減少、白血球減少、血小板減少を認めます。
症状がある場合は赤血球減少による貧血が多く、白血球が減少すれば感染しやすくなり発熱の症状が出る、血小板減少では出血傾向により皮膚の点状出血や鼻血などがみられます。症状、年齢、全身状態などを考慮して治療方針を決定し、薬物療法、輸血、幹細胞移植が行われます。
◀ この表は左右にスライドできます ▶
現在、予定されている休診はありません。