腎臓は体の老廃物を排泄するために、毎日休まず尿を作っている小さな臓器です。そんな大切な臓器を守ることを目指し、急性期から慢性期までさまざまな腎臓の病気の診療に取り組んでいます。
特長
当科では慢性腎臓病の治療に特に力を入れております。糖尿病、高血圧、慢性腎炎などにより徐々に腎臓の働きが低下していくことを慢性腎臓病と呼びます。成人の8人に1人が慢性腎臓病をもっていると言われており、現代の国民病とも言えます。当科では、尿・血液検査により腎臓病の早期発見を行い、適切な食事・薬物療法で進行を遅らせることを目指します。透析療法も行っており、腎臓病の全病期を通じて診療することが可能です。
腎臓病は、自覚症状がないことがほとんどです。
検診での検尿の異常、腎機能の異常を言われましたら、ぜひ一度、腎臓内科へ受診されて下さい。
また、かかりつけの医師とも、情報を共有しながら、連携をとり診療をしていきますので、一度、ご相談下さい。
受診されるときに、過去の検査結果などあれば、非常に参考になりますので、持参して頂けると助かります。
対象となる疾患
慢性腎臓病(CKD)
慢性腎臓病とはゆっくりと進行する腎臓病すべてを表します。原因としては、糖尿病や高血圧、脂質異常症、慢性糸球体腎炎などさまざまなものがあります。慢性腎臓病は今や国民病といわれるほど患者さんが多いといわれています。
慢性腎臓病の定義
- 尿検査、画像診断、血液検査、病理などで腎障害の存在が明らかで、特に0.15g/gCR以上のタンパク尿(30㎎/gCR以上のアルブミン尿)がある。
- GFR(推定GFR)が60(ml/分/1.73㎡)未満に低下していること
〈GFR〉糸球体濾過量といい、腎機能を表す指標です。
上記の1と2のいずれか、もしくは両方共が3か月以上続く場合、慢性腎臓病と診断されます。また、慢性腎臓病にはステージ分類があり、1~5段階に分けられており、それぞれのステージにあった治療を行う必要があります。
症状としては、初期段階のステージ1・2あたりでは無症状のことが多く、むくみや尿がでないといった自覚症状はステージ4・5まで進行しないと、出てこないことが多いです。また、ステージ3B以上の場合は、心血管疾患(脳梗塞、心筋梗塞など)の合併リスクが高いため、それらについても併せて精査、診断していく必要があります。
このため、尿検査や血液検査での早めの診断が必要になり、さらに心血管疾患を考慮した総合的な検査を勧めていく必要があります。
当院では、慢性腎臓病の診断から、治療までを一貫して行い、病期進行に伴う療法選択も行うことができます。
それぞれの患者様に寄り添って、腎臓病だけでなく、全身の心血管疾患などを含めた長期的な治療を一緒に行っていくことができます。
CKDステージ |
GFR(ml/分/1.73㎡) |
1 |
90以上 |
2 |
60以上90未満 |
3A |
45以上60未満 |
3B |
30以上45未満 |
4 |
15以上30未満 |
5 |
15未満 |
慢性腎臓病について、わかりやすい解説があります。ご参照ください。
急性腎不全
急激に進行する腎機能障害のことを指します。
原因はさまざまで、体で起こる色々な病気(感染症や、悪性腫瘍、脱水など)に伴い起こることや、薬などがあります。
慢性腎臓病と違い、早めに適切な治療を行うことで、腎臓の機能が改善することがあります。また、慢性腎臓病とは異なり、早い段階で、尿が出ないやむくみといった症状が出現します。多くの場合は、入院にて治療を行い、場合によっては一時的な(腎臓の機能が戻るまで)透析治療を行うことがあります。
糖尿病性腎症
糖尿病に合併する腎臓病を糖尿病性腎症といいます。
糖尿病になり、数年の経過で発症します。現在、日本の透析治療を受けられている患者さんの原因の第1位が糖尿病性腎症です。高血糖が持続することで、腎臓における糸球体(尿のもとをつくる部分)が障害をうけて、たんぱく尿が出るようになります。このたんぱく尿がたくさん出ることが、さらに腎機能を悪化させてしまいます。
糖尿病性腎症は、CKDのステージ分類に加えて、尿アルブミン、尿たんぱくの程度でさらに細かく分類されます。
尿中アルブミン値、尿たんぱく値の程度により、心血管疾患の合併が増えていきます。このため、尿たんぱくを減らす治療をすることで、腎臓機能の悪化や心血管疾患の合併を抑えることができます。
当院では、糖尿病専門医と連携して、治療を行い、適切な病期での治療介入を行うことができます。さらに、循環器内科や脳神経内科などと連携して総合的な検査、治療介入が可能です。
高血圧性腎硬化症
高血圧が原因でおこる腎臓病のことを指します。
長期的な高血圧が原因で、腎臓の糸球体という部位に障害が起き、腎機能が低下していきます。高齢者や高血圧の治療が不十分な患者さんに多いです。
治療は、血圧をゆっくり下げていき、腎臓の負担を除いていく必要があります。高齢化が進む日本において、現在は、高血圧性腎硬化症が原因で腎不全が進行し、透析治療を受ける割合が増えています。高血圧だけでは、自覚症状がないことが多いですが、無症状でも心臓や脳などの全身の血管にも障害が来ていることがあるため、総合的な精査や治療が必要となります。
当院では、循環器内科と連携し、心血管疾患についても併せて、精査加療をすすめていきます。
診療方針
当院の腎臓内科では、上記の病気や症状の診断や治療をおこなっております。
たんぱく尿や血尿などは、当院で可能な限り検査をおこない、場合によっては、近隣病院へ診断のための腎生検をおねがいすることがあります。
慢性腎臓病
1~2週間程度の教育入院を行って頂き、食事の治療と薬の治療を積極的におこなっています。
また、全身の検査も合わせておこなっていきます。入院中は、栄養士からの食事の治療の話や医師からの腎臓病についての説明などが個別にあります。可能な限り、腎機能を大切にした治療をおこなってきますが、それでも腎機能が悪化した場合には、入院し、透析治療を開始していきます。
透析治療
透析治療には、血液透析、腹膜透析があり、また、それらとは別に腎移植があります。これらについては、患者様と相談しながら、療法選択をおこなっていきます。
当院ではこの中でも血液透析に特に力をいれておこなっております。腹膜透析、腎移植については、希望された方には、関連病院にご紹介させていただきます。適切な時期に、血液透析を始めて、安全で安心できる治療を提供していきます。
また、外来での血液透析もおこなっており、当院からご自宅が近い場合は送迎もおこなっております。