お知らせ
2026年4月20日、キッセイ薬品工業主催のUro-Gyne(ウロギネ)セミナーのウエビナ–が開催されました。ウエビナ–とは、Webで行うセミナーのことで、コロナ禍で対面のセミナーが控えられる中、急速に普及しました。現地に行く必要がないため、遠方からでも参加が可能で、当日も東京を始めとして遠くは福島からも多くの視聴者が参加しました。
本日の主題であるウロギネは、泌尿器科を意味するウロと婦人科を意味するギネをまたがる疾患群を扱う医療と位置づけられています。従来産婦人科では、妊娠・分娩をとりあつかう「周産期医学」、子宮癌や卵巣癌の診断治療を主とする「婦人科腫瘍」、不妊症診断や体外受精胚移植などの不妊治療を行う「生殖医学」を3本の柱としてきました。これらに加えて近年、ウロギネを始めとして思春期、更年期、老年期医学など包含した女性医療という領域が産婦人科の第4の専門領域として確立されてきました。そして、女性のライフステージに応じた心身の健康とQOL向上を目的とした予防医学・治療として発展してきました。今回のセミナーでは私が企画と司会を務め、女性医療の代表的領域である女性骨盤底診療について、お二人のエキスパートをお招きして開催されました。
一人目の講師は、当院リハビリテーション科スタッフとして、骨盤臓器脱患者における骨盤底筋の評価と体操の指導に取り組んでいる井上小春さんにお願いしました。井上さんは大学時代から骨盤底筋の作用メカニズムに興味を持ち、卒業後も九州のリハビリテーション医療で有名な大分中村病院で骨盤底筋体操の指導の研鑽を積み、昨年より当院リハビリテーション科スタッフとして活躍しています。
骨盤底筋体操は、尿失禁や骨盤臓器脱などの疾患に加え、近年は産後ケアや美容面からも注目されていますが、超音波などによる骨盤底筋の動的評価を行うと、本人としては体操ができているつもりでも、肝心の筋肉が有効に動かせていない方が多いことがわかりました。従って、解剖学的なアプローチのもと、動的評価により患者さんの病態に応じたリハビリテーションプログラムを組むことで、患者さんが継続しやすく効果的な体操ができるとの発表内容はとても説得力があり、視聴者からも多くの反響がありました。
二つ目の演題は閉経関連尿路性器症候群(GSM)についてで、この分野の第一人者である福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター教授の小川真理子先生にお願いしました。GSMは新しい概念で、まだ聞き慣れていない方は多いと思います。GSMとは閉経前後の女性におこる泌尿器・性器の様々な不調の総称で、以前は萎縮性腟炎などと呼ばれていました。症状が腟だけでなく尿路にも及ぶので、今はこの名称が使われています。主な原因は閉経によるエストロゲン(女性ホルモンの一種)の低下です。エストロゲンが低下すると、血流や弾性が低下し、腟や膀胱、尿道の粘膜が薄くなります。
すると、腟は乾燥しがちとなり、かゆみやひりひり感が生じ、おりものの減少から性交痛がおこります。また、トイレが近くなり、急にトイレに行きたくなる尿意切迫や尿漏れ、膀胱炎になりやすくなります。主な対処法はエストロゲン腟座薬の局所投与がまず挙げられ、全身への影響が少ないため、安全に使用できます。ホットフラッシュが強い時にはエストロゲン製剤の内服も効果的です。また、局所の保湿や潤滑剤、腟内へのレーザー照射も有効とされます。
小川先生の講演ではこれらの病態を系統的に原因から対処法まで述べられました。とてもわかりやすく好評で、治療終了後に再発しやすい病態に対してエストロゲン腟錠の少量長期投与が有効というお話など、まさに明日からの臨床にすぐ役立つご講演でした。
最後に当院のリハビリテーション科について、ご紹介させて下さい。
当院では柄澤係長を筆頭として、リハビリテーションスタッフ7名体制で骨盤底筋リハビリを行っています。まず、医師の診察により骨盤臓器脱、尿失禁、過活動性膀胱、GSMなどの診断がついたら、後日自由診療にてリハビリ介入が行われます(図1)。そこでは問診、姿勢チェック、インナーマッスルとアウターマッスルの収縮異常の有無などのチェックに加え、エコーによる定量的検査を行います(図2)。エコーでは骨盤底筋の収縮による膀胱底の挙上を観察し、収縮遅延の有無や腹圧代償の有無、持続収縮や弛緩の可否をチェックすることで患者さんの骨盤底筋体操のクオリティを評価し、個別化した指導に役立てています。この視覚的フィードバックは正しい収縮の会得に有効で、効果的で質の高い骨盤底筋リハビリを可能としています(図3)。
体操の実践ですが、速筋による単発収縮と遅筋による持続収縮を組み合わせることが大切で、休憩すなわち弛緩もとても大切です(図4)。これらの体操を1日100回行えば、早ければ4週で自覚症状の変化を、12週で明確な効果を自覚できるといわれ、様々な姿勢で行うのが理想とされます。ここでのポイントは、頑張って一気に行おうとしないことです。効果が出るためには、体操をコツコツと長続きさせないといけません。例えば10回を1セットとし、日常生活内(排便後、移動中、家事の合間など)に体操を組み込むことで、無理なく持続できるということを強調したいと思います(図5)。
最後に井上さんの講演のまとめのスライドを提示します(図6)。
骨盤底筋体操を産後はもちろん、若々しいスタイルの保持から骨盤臓器脱、尿失禁、最近の知見ではGSMの予防のためにまで、あらゆる年代の女性が行うべきものと強調して本稿を終えたいと思います。