産婦人科医 明樂重夫 公式サイト 明理会 東京大和病院

2026年1月31日(土)~2月1日(日) 第47回日本エンドメトリオーシス学会に参加

学会・研修

2026131日、21日と、第47回日本エンドメトリオーシス学会(会長:谷口文紀《鳥取大学医学部 産科婦人科学分野》)に参加してきました。

本学会はその成因や進展に謎の多い子宮内膜症という病気を、基礎、臨床の両面から探求するという学会で、単一疾患を研究し議論するという極めて異色で高度な専門性を有する学会です。これまで子宮内膜症取り扱い規約の刊行など、我が国の子宮内膜症研究および診療をリードしてきました。私も理事として様々な形で活動に参画し、思い入れの強い学会でもあります。

子宮内膜症の臨床において近年話題となっているのは、卵巣チョコレート嚢胞と深部子宮内膜症の取り扱いだといえると思います。卵巣チョコレート嚢胞は悪性化、感染リスク、破裂リスクから、4cm以上の直径を有するものは基本的に腹腔鏡下に嚢胞摘出術を行うのが第一選択でした。

しかし、近年嚢胞摘出術の施行後に、卵巣予備能(卵巣内の卵子の数)の減少が証明され、体外受精胚・移植法(ART)の一般化とも相まって、不妊患者においては必ずしも嚢胞摘出を行わず、体外受精・胚移植法を先行させることも検討されてきました。しかし、当然悪性化や感染のリスクは残りますから、様々な観点からの検討から、今では再発例や両側例を除き、5-6cm以上のサイズで特に痛みなどの症状を有する症例では、嚢胞摘出術が選択されることが改めてトレンドになってきました。

もちろん、この場合には卵巣予備能温存を十分配慮した手術手技が必須となります。私は以前より、フランスのCanis先生が発表したSurgical Arrowを意識し可及的に嚢胞壁を薄く切除する術式を提唱し、様々な学会で講演してきました。

  • 明樂重夫(教育講演)、子宮内膜症性不妊における手術療法の意義 —ARTか腹腔鏡か— 第61回日本生殖医学会学術講演会 2016.11.
  • 明樂重夫(シンポジウム)子宮内膜症の腹腔鏡手術 —根治性と妊孕性保持のバランスを考える— 第60回日本産科婦人科内視鏡学会学術講演会.横浜.2021.2

今回のシンポジウムでも、我が国の囊胞摘出術はこの方法に集約されてきた印象を持ちました。

一方の深部子宮内膜症ですが、子宮内膜症が進行し骨盤奥深くに結節や癒着を生じさせ、排便痛や性交痛などの激烈な痛みを引き起こす病態です。

また、その存在は腹腔内環境を悪化させ、不妊症の原因にもなっていることが近年証明されました。治療としてはまずプロゲスチン製剤などのホルモン療法が第一選択ですが、痛みに効果が少ない場合が多い上に、妊娠を希望している方には排卵を抑制するために用いることができません。その場合は摘出手術の適応となりますが、病巣が骨盤奥深くに位置して見えにくい上、直腸や尿管がすぐ近くにあるため、直腸や尿管損傷などの合併症のリスクから開腹手術では摘出が極めて困難でした。

その点、腹腔鏡手術は傷が小さく痛みが少ないという利点に加え、骨盤深部に接近して拡大視野で病巣の拡がりを観察できるため、深部病変の摘出には好適です。とはいえ腹腔鏡手術の中でも最も難易度は高く、直腸・尿管損傷などの合併症をおこさないためには、熟練した術者による、解剖に基づいた手技が必須です。これまで私は深部子宮内膜症病巣の徹底的かつ安全な摘出が実現する系統的術式を国内外で発表し、普及に努めてきました。

  • Akira, S. (invited lecture) A systematic laparoscopic surgery for deep infiltrating endometriosis: is it feasible? 7th Asian Conference on Endometriosis. Taipei, Taiwan. 2018.9.
  • Akira, S. (Invited lecture) A systematic approach to posterior compartment DIE. 5th Congress of the Society of Endometriosis and Uterine Disorders. Montreal, Canada. 2019,5.

 

今回、母校の教室の後輩たちが研究を発展させて日本エンドメトリオーシス学会のランチョンセミナーやシンポジウムなどで子宮内膜症診療の臨床成績を発表しているのをみて、実に頼もしく、嬉しく思いました。これからも、この系統的術式のさらなる普及に努めていきたいと思います。

岩瀬理事長、教室の後輩達と

米子といえば、鳥取大学学長の原田先生が日本エンドメトリオーシス学会の理事長をお務めだったこともあり、子宮内膜症関連のセミナーや研究会で何回も訪れた街です。鳥取県の都市ですが島根県との県境に近いこともあり、これまで学会後は出雲大社や宍道湖、松江城など島根県の名所旧跡を訪問することが多かったです。今回は雪ということもあり、米子からもほど近い足立美術館を訪問しました。

足立美術館は島根出身の事業家である足立全康により1970年に創設されました。足立全康は繊維問屋や不動産関係の事業の傍ら、幼少の頃から興味を持っていた美術品を収集していましたが、次第に庭造りへの思いも強くなり、71歳の時に郷土への恩返しと島根県の文化発展の一助になればという思いで、素晴らしい庭園を持つ美術館を開設したとの事です。親交のあった横山大観の絵画など現代を代表する日本画家の優秀作を350点所蔵するとともに、5万坪にも及ぶ広大な庭園が有名です。

特に庭園はアメリカの日本庭園専門誌であるジャーナル オブ ジャパニーズ ガーデニングにより2003年から連続して日本一と認定されており、その見事さは筆舌に尽くしがたい程です。

私は今回2回目の訪問でしたが、季節により全く違う趣をみせる姿と、遠くの里山まで完璧に借景とする巧みさに改めて魅入られてしまいました。横山大観などの日本画がお好きな方や、庭園に興味がある方は是非季節を変えて何度も訪れることをお薦め致します。

このように、今回の米子での学会も実に有意義な学会でした。

これからも子宮内膜症のハイエンドな診療、研究を明理会東京大和病院で展開していく所存ですので、宜しくお願い致します。

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