産婦人科医 明樂重夫 公式サイト 明理会 東京大和病院

2025.9/4-7 2025 APAGE 25th Annual Congress in上海|招請講演

学会・研修

94日から97日まで、APAGE(アジアパシフィック婦人科内視鏡学会)2025に出席するため中国、上海に行ってきました。2006年以来19年振りでしたが、発展の著しい中国ですので、どのように変化しているのかとても興味がありました。

APAGEは私が2021年に会長として主催した学会で、今回もpast presidentとして招待され講演をしてきました。本来はアジアの学会ですが、ヨーロッパ(ESGE米国(AAGLの婦人科内視鏡学会と近年盛んに学術交流しており、今回も多くの欧米からの参加がありました。中でも、私が日本医科大学時代に主催した別の学会に招聘したTed Lee教授とMichel Canis教授(共にAAGLPresident)、昨年のESGEで御世話になったRajesh Devassy教授とRudy Leon De Wilde教授(共にESGEの理事)と再会できたことはとても嬉しい出来事でした。

学会会場は浦東(プートン)エリアにあり、ドバイにも勝るとも劣らない近未来的建築が林立する偉容には圧倒されるものがありました。

東方明珠電視塔と上海国際会場センター

東方明珠電視塔と上海国際会場センター


会場にて

今回は子宮内膜症のシンポジウムでCanis教授らの講演の座長を務めた後、不妊症、特に体外受精反復不成功例のおける針状腹腔鏡による日帰り手術の有用性に関する講演を行いました。

針状腹腔鏡手術は私が開院当初から手術に参画している杉山産婦人科丸ノ内で行ったものです。

麻酔は全身麻酔で行い、覚醒の早い麻酔薬を選択することにより、ほとんどの症例に日帰りベースで手術を施行できました。また、2回以上胚移植をしても妊娠に至らない体外受精反復不成功症例に腹腔鏡手術を行うと、術後妊娠率が有意に上昇しました。このように針状腹腔鏡手術は不妊症治療においてとても有効で、身体への負担が極めて少ない有用な方法です。

中国でも発表内容は注目され、現地メディアからインタビューを受けました。近年、我が国の女性の就業率はとても高くなっていますが、治療のために仕事を休むことはまだまだ難しく、働きながら不妊治療を行うのには大きな制約があります。そのため、不妊治療と仕事の両立がとても困難で、不妊治療継続のために仕事を辞めることを強いられるケースが多いのが現状です。

このような状況を打破するためにも、日帰り腹腔鏡手術は働く女性にとっては極めて望ましいものと思われます。当院でも超早期社会復帰を目指し、針状腹腔鏡手術に準じたシステムを導入していますが、今後さらにこれを発展させていきたいと思っています。

上海は中国の東部、揚子江河口に位置し、商工業や金融の中心で人口2,400万人を超える大都会です。歴史的には比較的新しい街で、1,300年頃の元の時代に港町として発展していきます。

(2025年8月1日時点で、東京の人口は14,268,182人)

清代のアヘン戦争を終結した1842年の南京条約により上海は欧米列強に開港し、イギリス、フランス、アメリカ、日本などにより租界と呼ばれる外国人居留地が開かれました。そして1920年代から1930年代にかけて上海は中国最大の都市として発展し、魔都や東洋のパリと呼ばれるなど大いに繁栄しました。

その後、太平洋戦争や中華人民共和国の成立により上海からは外国資本が撤退しましたが、1980年頃から外国資本が流入して再び目覚ましい発展をもたらしました。そして、2010年の上海万博開催で国際都市としての上海は復活を遂げました。

前回上海を訪問したのは2006年でしたが、当時から租界があるバンドこと外灘(ワイタン)に立ち並ぶ西洋建築群は100年の歴史を感じさせる偉容をみせていました。

一方、黄浦江(こうほこう)を挟んだ対岸の浦東エリアは当時アジア1の高さだったテレビ塔(東方明珠電視塔、467.9m)くらいが目立っていたくらいで、まだまだ建設中の地域が広がっていました。それが今回の訪問では完成しており、東京でいうと丸ノ内のような端正で清潔、並木が美しい市街となっていて、驚かされました。

行き交う自動車は多くが電気自動車で、ナンバープレートの色がガソリン車と異なるのですぐ見分けがつきます。オートバイはほぼすべてが電動自転車に分類され、結構なスピードで走り回っていました。そのためか、前回より格段に空気がきれいになっていたように感じました。

学会が用意してくれたディナー会場や黄浦江クルーズでは両岸の対照的な建造物群が美しくライトアップされ、中国の歴史と現在地を強烈に印象づけられました。

ディナー会場から見た浦東エリア

ディナー会場

 

クルーズから見た夜の租界


美しくライトアップされた浦東アリアの建造物群

最終日、上海を代表する観光スポットである豫園(よえん)と西塘(シータン)を訪れました。豫園は明代の美しい庭園で、樹木・水辺・建物がうまく配置されています。

豫園(よえん)

豫園(よえん)の庭園

上海ならではのお土産やグルメ、活気にあふれている商店の雰囲気も魅力で、日本でも人気の小籠包に舌鼓を打ちました。

一方、西塘は上海から車で1時間半ほどの郊外にあり、映画ミッション・インポシブル3のロケで有名になった水郷古墳です。運河の周りには古い石造りの家が並び、江南の水郷らしい景色が広がっていました。映画でトム・クルーズが走った煙雨長廊(イェンユウチャンラン)など見所も多く、夜にはライトアップされてとても良い雰囲気でした。

煙雨長廊

煙雨長廊


ライトアップされた街並

ライトアップされた街並

奥まった場所には何とディスコやバーがあり、上海の若者が泊まりがけで遊びに来る場所とのことで、東京との違いがとても興味深かったです。

このように、上海は観光地としても魅力が多く、中国の発展も目の当たりにできて、印象深い国際学会になりました。来年APAGEはインドネシアのバリ島で開催されるとのことですので、またデータを揃えて出席したいと思います。

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