学会・研修
10月27日から30日まで、フランス、マルセイユで行われたESGE(ヨーロッパ婦人科内視鏡学会、European Society for Gynecologic Endoscopy)に招聘され、講演を行ってきました。
https://www.esgecongress.eu/files/inhalt/esge-2024/downloads/ESGE2024_Faculty_2024_08_21.pdf
講演内容は、腟子宮内膜症の妊孕性に与える影響とその切除の有用性についてです。
腟子宮内膜症は深部子宮内膜症の最も重症なタイプで、激しい性交痛、排便痛、月経困難症を引き起こし、女性のQOLを著しく低下させる疾患です。近年、腟子宮内膜症は他の部位に発生した子宮内膜症の病巣と同様、腹腔内の環境を悪化させ、妊孕能(妊娠するための力)を損なわせていることが報告され、その摘出が自然妊娠や体外受精における妊娠率の向上に大きく寄与することがわかってきました。
しかし、腟病変は骨盤の最深部に位置し、摘出は尿管や直腸の損傷を引き起こしやすい事が大きな問題でした。我々はこれまで深部子宮内膜症を安全かつ徹底的に摘出できる系統的摘出術を発表してきましたが、今回の講演でも注目されたようです。
今回の招聘の背景には、ESGEが掲げる世界戦略がありました。
我が国では腹腔鏡などの内視鏡手術は当然のように受けることができますが、座長のドイツのDe Wilde教授によりますと、内視鏡手術を受けることができるのは世界の人口の10%に過ぎず、ESGEとしてはアジアと協調することで内視鏡手術の普及にさらに努めていくべく、APAGE(アジア婦人科内視鏡学会)のPast presidentとして私に声が掛かったとのことです。
我が国では当たりまえのように受けることができる腹腔鏡手術ですが、改めて世界の現状を目の当たりにし、今後の普及に医療面でも機器開発面でも、日本の役割は大きいと感じました。
マルセイユは地中海に面した南仏、プロファンス地方の中心都市で、フランスではパリに次いで大きい都市です。湾に面した天然の良港として、ローマ帝国以前より栄えていました。
湾の入口には両サイドに要塞がおかれ、地中海が交易や戦争の表舞台だったころの面影が色濃く残っています。
名物のブイヤベースや内臓の煮込みを始め、美食の街としても有名です。付近には水道橋や野外劇場、凱旋門などのローマ遺跡が数多く残り、改めてローマ帝国がフランスを含めた全地中海沿岸世界を支配していたことを実感しました。
また、近郊にはセザンヌが生誕し、生涯にわたり数多くの作品を残したエクス–アン-プロヴァンスなど、城壁に囲まれた美しい街や村が数多く点在し、長い歴史によって育まれた豊かな文化に触れることができました。フランスというと、どうしてもパリのイメージになりますが、南仏地方もこのように大いに魅力があるところです。
皆様も機会があれば、あくせくしないゆっくりとした旅をこの地で行ったら如何でしょうか。