手術療法
腹腔鏡下 / ロボット支援下仙骨腟固定術は骨盤臓器脱に対して行う手術で、LSC / RSC手術(Laparoscopic / Robot-assisted Sacrocolpopexy)とも呼ばれています。骨盤臓器脱の手術療法は、緩んだ組織を補修する手術とメッシュを使用した手術の2つに分けられますが、腹腔鏡下仙骨腟固定術は「メッシュを使用した手術」となります。
脱出している臓器や脱出の程度によって手術方法を選択しますが、LSC / RSCは子宮脱を有するすべての骨盤臓器脱に適応があり、進行した症例や他術式で再発した症例など重症例も確実に修復できます。
開腹による仙骨腟固定術は30年以上前から行われてきた手術で、子宮摘出術後の腟断端脱修復のゴールドスタンダードでした。下腹部に大きな傷が残り、体に負担の大きな手術でしたが、腹腔鏡手術の導入で、傷は腹部に数か所小さな穴のみとなり、スコープと鉗子により骨盤奥まで視認してメッシュを固定できることから、子宮脱や膀胱瘤、直腸瘤にも適応が拡大され、急速に普及してきました。
子宮を頸部だけ残して摘出し、頸部をメッシュで吊り上げて仙骨前面の靱帯に固定することが基本となり、手術の成功率が高い、再発率が低い、体への負担が少ない、自然な腟が再建できる、メッシュによる術後合併症が少ないなどの数々の特徴があります。また腟壁を切開しないため、術後の性交痛や違和感が少ないメリットもあります。LSC、RSCともに保険適用となりました。
このようにLSC、RSCはメリットの多い手術ですが、やや手技が困難で時間がかかるのが欠点です。そのため、術者にはスキルが要求され、合併症を有する患者さんには慎重に適用する必要があります。当科では腹腔鏡技術認定医、ロボット手術術者有資格者が必ず手術に入り、仙骨腟固定術から従来法(NTR)まで最適な術式を患者さんに応じて個別に選択するようにしています。