産婦人科医 明樂重夫 公式サイト 明理会 東京大和病院

骨盤臓器脱の治療

手術療法

骨盤臓器脱とその治療法

骨盤臓器脱は、筋肉や靭帯が緩んだことによって臓器が腟から脱出する疾患です。手術療法は、緩んだ部分を見つけてしっかりと補強していく治療法です。しかし、手術療法で脱出した臓器を支える筋肉や靭帯のみを補強すると、術後に補強した部分の周囲に負担がかかり、別の臓器が脱出することも少なくありません。そのため手術療法では骨盤底を形作る筋肉や靭帯、筋膜などのバランスを考慮してトータルに修復していくことになります。

手術療法の選択

手術療法では年齢や症状、性交や合併症の有無などをよく検討したうえで術式を選択します。術式は大きく二つ、痛んだ組織を修復する術式と、メッシュ(合成繊維でできた網目状の布)を使用する術式に分かれます。

痛んだ組織を修復する術式(NTR)

痛んだ組織を修復する術式はNaitive tissue repair(NTR)といわれるもので、従来より行われている一般的な方法で数多くの種類があります。メッシュ関連の合併症がなく比較的安全な術式ですが、再発率が20〜30%と高いものもあり、当科では子宮摘出後に腟断端を挙上する術式と腟を閉鎖する術式を主として選択して、安全性と確実性を両立させています。

メッシュを使用する術式

メッシュを使用する術式には腟からメッシュを挿入するTVM(Tension free Vaginal Mesh)手術と腹腔鏡またはロボット補助下で子宮腟部をメッシュで仙骨に固定する仙骨腟固定術(Laparoscopic / Robot-assisted Sacrocolpopexy, LSC / RSC)があります。TVM手術は痛みやメッシュが露出するなどの合併症トラブルが起こる可能性が多数報告され、当科では施行していません。一方LSC / RSCは合併症や再発が少なく、すべての種類の骨盤臓器脱に適応があるため、急速に普及してきました。重症例やNTR手術で再発した症例に良い適応がありますが、手技がやや困難で手術時間も長いので、腹腔鏡手術やロボット手術に精通した施設で行われるのが望ましい手術です。当科では腹腔鏡技術認定医、ロボット手術術者有資格者が必ず手術に入るようにしています。